原広司のページ
Hiroshi Hara Architecture
巨大な建築を多く手がけている建築家、原広司。
彼の作品の中で僕が見てきたものを紹介するページです。
年 | 作品 | データ |
1967 | 伊藤邸 Ito House |
東京都 |
東京都郊外の住宅地につくられた住宅である。 原さんの「有孔体理論」を具現化したもので、有孔体理論とは、孔がない閉じた状態は 存在しない空間であり、孔を開けることで外界と繋がって建築になるという 理論だったと思います(間違ってたらすみません。。)。 この建物も膨らんだ袋のようなものにラッパ状の入口であったり、 突起のような天窓という孔が開けられて建築になっています。 原さん設計の住宅といえば黒い外壁というイメージがありましたが、 見学に行ったときは黄色でした。 おそらく塗り替えられたんだと思いますが、元は黒だったのでしょうか。 '22.3.12 (追記)hinataさんから情報をいただきまして、2021年頃に解体されてしまったそうです。。 '23.7.27 |
||
1972 | 粟津邸 Awazu House |
神奈川県 |
神奈川県につくられたグラフィックデザイナーの住宅である。 原広司さんによる「反射性住居」の代表作の一つで、 このあとにつくられる自邸なども同理論にもとづいた設計がなされています。 傾斜地に建てられており、換気塔が林立する屋上からと、 敷地に沿って下がった道路側の側面からの二つのアクセスが可能となっています。 平面プランは中心軸(通路)に対して線対称に諸室が配置されており、 外観の素っ気ない表情に対して、内部は豊かな表現がなされています。 原自邸の時も思ったのですが、内部空間を体験してみたいです。 '15.11.27 |
||
1974 | 原自邸 Hara House |
東京都 |
東京郊外に建てられた原広司さんの自邸である。 自然の多く残るエリアに建てられており、建物自体も木々に覆われて 遠くからは外観が全く見えません。ただの森林といった感じです。 近づくと入口の隙間から少し黒塗りの下見板張りの外壁と、その横にある 1998年に増築されたコンクリートとガラスの建物が少しだけ見えます。 傾斜地に建っていて、内部は中央に設けられた通路と階段が建物を貫いており、 その上部にはトップライト、左右には諸室が設けられています。 通路に向かって諸室にもトップライトが設けられていて、建物の中にもう一つの建物が あるかのような不思議な空間となっています。 この内部空間は建築雑誌等でよく紹介されています。入ってみたいです。 '10.10.30 |
||
1979 | 松擧堂 Shokyodo |
愛知県豊田市 |
版画コレクターの住宅に小さな美術館が併設してある。 全体が真っ黒である。しかもすごく軽い(うそくさいといってもいい)黒である。 裏に工場があってそことつながっていたのできっと工場の社長の建物であろう。 原の得意な近未来的な部分が見えるにもかかわらず和風に仕上げているのは見事だった。 '99.12.15 | ||
1981 | 末田美術館 Sueda Art Gallery |
大分県由布院町 |
由布院に数ある美術館の中でも一番初めに出来たという美術館である。 末田さんという夫婦そろって芸術家の作品を展示した個人美術館である。 外観は黒で統一されており、同じ原氏設計の松擧堂と同じ感じである。 内部空間はそれに対して白が多用されており、さまざまな角度から作品を鑑賞できるよう設計されている。 L型の平面計画であり、中庭が「L」の内側につくられていて、そこにも野外彫刻が展示されている。 末田さん(奥さん)本人が入場券をきってくれたり、喫茶コーナーでコーヒーをたててくれたりしたので びっくりしました。 '01.11.29 |
||
森工房 |
長野県坂城町 |
|
長野県につくられたリトグラフの作品を作る工房及び展示スペースである。 周りは野菜畑やガーデニングをした庭などとても素敵な環境づくりをされています。 モノトーンな色彩から成る建物構成は原氏独特なものですが、 同年竣工の「末田美術館」に見られるどぎつい感じの黒ではなく、 この建物は落ち着いた雰囲気でよかったです。 原氏といえば最近の巨大建築を思い浮かべがちですが、 この建物や個人住宅のような小建築にも違った魅力があって好きです。 (最近の個人住宅はちょっと理解しにくいものもありますが。。) '02.11.7 |
||
1982 | ヒルポートホテル |
東京都渋谷区 |
渋谷の駅から坂を上った場所にあるビジネスホテルである。 今となっては「あった」と言うべきでしょうか。建築マップ東京の改訂版をなにげなく 読んでいて、「現存せず」という注意書きを見てびっくりしました。 海をイメージしたという建物の外観は、敷地に対する厳しい規制をクリアしつつも 客室数を最大限に確保するという難題をうまく消化しており、なおかつ設計者の デザインもうまく盛り込んでいます。ややデザインは押さえ気味ですが。。 上の写真を撮った時は雨がひどかったので、晴れた日にまた来てしっかり見学しよう と思っていたのですが、それを実行する前になくなってしまいました。 建物自体除却されてしまったのでしょうか?どなたか東京の方情報いただけるとありがたいです。 '03.5.10 (追記)きむさんから早速情報をいただきまして、やはり建物も除却されてしまったそうです。。 残念です。 '03.5.13 |
||
1984 | 秋田県営住宅新屋団地 |
秋田県秋田市 |
秋田市郊外につくられた秋田県営住宅である。 10年に渡って少しずつ建設していった団地であり、 7号棟が第1棟目になっていて原広司が実施設計まで関与したものである。 東西軸の住棟を平行配置したプランはよくある公団住宅のようであるが、 3層吹抜けの開口部が南北への通り抜け空間を作り出しています。 それによって交差する四つ辻が団地内につくりだされ、 溜まり場のネットワークを創出することを意図しているそうである。 完成から約20年を経た現在はかなり傷みがきているようで少し物悲しい雰囲気でした。。 '03.8.30 |
||
1986 | ヤマトインターナショナル Yamato International |
東京都大田区平和島 |
大手アパレルメーカーの本社ビルである。 映画「マルサの女」で査察官のオフィスとして使われていた。 平和の森公園に面した敷地に立っており、銀色に光り輝いている。 ファサードの複雑な形態は京都駅ビルの壁面にも継承されているようである。 一般には中に入れないのでファサードと西にある水のたたえられた広場だけしか 見る事ができないのは残念である。 '99.10.18 | ||
田崎美術館 Tasaki Museum of Art |
長野県北佐久郡軽井沢町 昭和61年日本建築学会賞 | |
田崎廣助画伯を記念する個人美術館である。 冬季は休館であるため夏をイメージして設計された。 シルバーとグレーを基調とした色彩の建築と、ガラスを通してみえる中庭の緑が 見事なコントラストを醸し出しており気持ちがいい。 しかし中庭の手入れがかなりなっていなくて芝生が汚くなっていた。。 '99.10.18 | ||
1987 | 那覇市立城西小学校 |
沖縄県那覇市 |
首里城の守礼門のすぐ近くにある小学校である。 景観に配慮した設計になっていて、守礼門側の建物は平屋になっていて 外観も沖縄の集落をイメージした赤瓦葺による屋根が採用されています。 それに対して運動場側はRCによる近代的な建物になっていて対比が面白いです。 各教室に設けられたトップライトのデザインもかわいくて良かったです。 '03.4.17 |
||
1988 | ゆう喜庵 |
群馬県伊香保町 |
伊香保町にある有名な老舗の水沢うどんの店、大澤屋の茶室である。 大澤屋は岡本太郎も大好きであったということで入口には岡本太郎の彫刻が置いてあったり、 中には有名な芸術家の作品が展示してあり、美術館のようである。 増築された茶室はコンクリート造なので、どう見ても茶室には見えないです。 うどんを頼みながら、茶室を見に行きたいと言ったら「予約客専用なので駄目」と断られた。 茶室の写真が飾ってあったので見ると、どうやら内部は落ち着いた茶室の空間のようである。 (写真には原広司や伊東豊雄が写っていた。) 原氏にしては装飾が少ないような感じがした。 '01.6.18 |
||
飯田市美術博物館 Iida City Museum |
長野県飯田市 |
|
飯田市の郊外につくられた文化施設である。 飯田市出身の画家である菱田春草の記念展示室を持つ美術館と、 伊那谷一帯の自然と文化を紹介する博物館から構成されています。 建物全体は原氏が日本建築学会賞を受賞した「田崎美術館」を大きくしたというイメージです。 屋根の形は南アルプスを連想させ、ロビーの列柱とトラスは森を思わせるように設計されているそうです。 屋根の形はともかくとしてロビーの列柱はちょっと多すぎて、うざい感じがしてしまいました。 飯田城跡に建てられたため、建物周りは城の遺構を再現しようとするデザインが見られますが、 この現代建築と城跡というのはかなりのアンバランスに思われました。 飯田市は原氏の出身地であるため、彼は故郷に錦を飾ったということかも知れませんが、 この建物は地元の人からは受け入れられているのでしょうか。少し不安になりました。。 '04.3.31 |
||
1989 | 日専連仙台 |
宮城県仙台市青葉区 1991年仙台市都市景観賞 |
仙台の中心部にあるイベントや会議を行うための施設です。 BEEB(ビーブ)というのが愛称だそうです。 エントランスを入ると1階から3階まで吹き抜けのギャラリーホールがあり、4階より上には 会議スペースや情報コーナーなどがあります。 なんとなくこういうビルを原氏が設計するというイメージがなかったために驚き、「ほんまかなあ」 と思いましたが、ファサードの上部には彼の特徴がよく出ていたので納得しました。 雨の日の夕方だったので写真が悪くて残念です。。 '01.9.27 (追記)久々に仙台に行ってきて晴れた日の写真をとってきました。 '02.9.25 |
||
1990 | 相鉄文化会館 |
神奈川県横浜市泉区 |
緑園都市につくられた文化会館である。近くの駅前には原氏の教え子である山本理顕の建物が多く存在する。 彼の特徴である雲形の屋根や鉄骨トラスの羽根などが所々に見られる。 そして必要以上にとられた屋外のパブリックスペースがこの施設にもみられる。 最上階につくられた三角のギャラリー部はパブリックスペース上の中空に浮いたように設計されている。 その最上階へパブリックスペースから屋外の階段をつたう経路によってアクセスできるようになっている。 彼の代表作である「京都駅ビル」や「梅田スカイビル」を小さくまとめたという印象を受けた。 '01.3.15 |
||
つくば市立竹園西小学校 | 茨城県つくば市 |
|
筑波研究学園都市の中心部につくられた小学校である。 隣接地が公園であることなどから建物の高さを低く抑えていて 中庭を取り囲むように教室群が配置されています。 各教室ごとにそれぞれ異なった形態を持つガルバリウムによる屋根が取り付けられていて 学校全体が一つの集落のようなイメージを受けます。 ただ、写真を撮っていて思うのですが、低層で広がりのある建物は うまく写らない(僕の腕がないから写せない(笑))ので 見ている人にはあまり建物の雰囲気が伝わっていないかも知れません。 '04.7.4 |
||
1992 | 内子町立大瀬中学校 | 愛媛県内子町 |
歴史的町並みで有名な内子町にある中学校である。 大江健三郎の生地であるこの町の「文学の里づくり構想」の第一歩としてつくられた。 すごく山の中の学校といったところにあるのに超近代的建築である。 斜面になった土地につくられていて一番下に普通教室があり中庭、そして特別教室が階段状にある。 左右に二つの円筒形の建物があり体育館かと思ったら美術室と音楽室だった。 彼の得意の雲型、鋸型、箱型の屋根が所々に見られる。 街中にこの中学校はともかく田舎にこれはいいのか?と思ったがやはりうらやましい中学校である。 '00.9.26 |
||
1993 | 新梅田シティ・ 梅田スカイビル Umeda Sky Building |
大阪府大阪市北区 |
梅田のランドマーク的存在であるスカイビルである。 問題としては駅から遠いということである。 スカイビルだけがあるのかと思っていたが、実際は全くアンバランスなホテルが一緒にある。。 同じ巨大な建築なのに京都駅ビルよりも受け入れやすかったのはなぜだろう? ビル下のアトリウム空間には京都駅ビルにも見られた黄色や青色のオブジェ?がやはりある。 上に行くと彼の芸術作品?があるが全く理解不能である。 '00.1.4 | ||
1997 | JR京都駅 JR Kyoto Station Building |
京都府京都市下京区 |
賛否両論を巻き起こした新京都駅。 大階段によるV字型のいわゆる「谷の建築」はすばらしい。 しかし遠く(奈良)から近づいていくと壁がそびえているみたいで少し嫌な感じがする。 イベントができるように空中につくられた舞台は、 危険だという事で使う事ができないらしい。もはやただのオブジェとなっている。 | ||
1998 | 宮城県図書館 Miyagi Prefectural Library |
宮城県仙台市 |
仙台市北部につくられた県立美術館である。 泉パークタウンという巨大ニュータウンの調整池敷地に建てられており、 起伏の激しい山林の中に長さ200mもあるチューブ状のメタリックの建物が浮かんでいて、 地球を侵略しに来たUFOが山に着陸したという印象を受けました。 敷地の形状を出来る限りそのまま利用する設計になっていて、谷の部分の建物下に 出来た空間を地形広場「ことばのうみ」と名付けた階段状の屋外広場としています。 チューブ状の閲覧室の天井は、所々を膨らませることで変化を持たせた面白い空間になっていました。 建物内や屋外空間には多数のアート作品が設けられていて、その計画を北川フラム氏が 行っています。建物内外のサインはジョゼ・デ・ギマランイスの作品なんですが、 原、フラム、ギマランイスといえば越後妻有アートトリエンナーレを思い出しますね。 '06.12.11 |
||
1999 | たかき医院 |
新潟県十日町市 |
新潟県の山地にある十日町市につくられた病院である。 田舎につくられた総合病院といった感じですが、小さな規模の病院でした。 シンプルな外観ですが、屋根の傾斜を少しずつ変えることにより、屋根妻の部分に 隙間をつくって開口部に変化をつけるといった工夫が素晴らしかったです。 ファサード側よりも裏面はさらにシンプルですが、高さに変化をつけたスリットも 微妙ですが、設計者の技を感じさせるものでした。 最近小さな建物を設計しないのに珍しく設計したのは、原氏とたかきさんは知り合いなのでしょうか? '02.6.28 |
||
2000 | 広島市立基町高等学校 |
広島県広島市 |
有名な基町団地に隣接してつくられた高校である。 二棟の建物をブリッジでつないでいて、二棟のあいだにはプールがあるようです。 片方の建物が体育館で、もう一方が教室及び管理室です。 1階部分がピロティになっていて開放された空間を演出することが意図されていたようですが、 チェーンがつけられていて、関係者以外立ち入り禁止の立て札が。。 さらに僕が行ったときには警備の人が見回りまでしてました。 あと個人的には高校にエスカレーターは、いらないんじゃないでしょうか。 '01.11. |
||
2001 | 札幌ドーム Sapporo Dome |
北海道札幌市 |
2002年の日韓主催のサッカーワールドカップに向けて建設されたスタジアムである。 巨大なシルバーのドームとその前に芝生に囲まれた屋外空間があり、 この屋外空間に向かってドームが口を開けることが可能になっています。 これは「モビールシステム」と名付けられた可動式の客席スタンドが動くことによって 開くことが可能になっており、そこから「ホヴァリングステージ」と名付けられた 回転も可能なフィールドの出し入れを行うようになっています。 これによって野球とサッカーの利用転換が出来るのですが、ドームからサッカーフィールドを 出し入れするというあまりにシンプルな発想をそのままやっちゃったというのがすごいです。 のっぺりした外壁に円筒形の展望台が飛び出しているのもなかなか味があります。 展望台からの景色が良かったという記憶はありませんが。。 '05.1.10 |
||
2002 | 飯田高羽合同庁舎 Iida Takaha National Government Building |
長野県飯田市 |
飯田市につくられた税務署や測候所、労働基準監督署などが入った合同庁舎である。 地方の庁舎らしくこぢんまりとした4階建ての建物ですが、測候所が入っているため 観測塔が設けられていて、そのためインパクトのある建物となっています。 また建物を南北に二分するように中央に吹き抜けのアトリウムが設けられていて 斜めに架けられたブレースがダイナミックでかっこよかったです。 原さんは飯田市にこの建物以外に「飯田市美術博物館」も設計していて、 どういう繋がりなのかなあ、と思っていたらどうやら飯田高校出身みたいです。 '05.1.29 |
||
2003 | 越後妻有交流館 キナーレ Tokamachi Stage Echigo Tsumari Kouryukan |
新潟県十日町市 |
越後妻有アートトリエンナーレ2003のメインステージとして整備された施設である。 用途は、十日町市の伝統工芸である着物の店舗ときもの歴史館、温泉等です。 「キナーレ」とは、この地方の方言である「来なされ」と着物を「着なされ」という意味をかけて 名付けられたそうです。公募により決めたそうです。 建物は一辺が72mの正方形(2階建)に平屋の温泉棟が張り付いた形態になっています。 正方形は中央がオープンな池になっていてその周りを巡るように回廊が配置されています。 原氏のコメントによると外が道路や鉄道などによって良い環境にないために内側に開かれた 空間を作り出したそうです。確かに外から見ると閉鎖された建物で、そっけないです。 どうやら温泉施設は予想よりも利用客が少ないらしく、初年度から赤字だそうです。。 '04.4.19 |
||
2016 | みなと交流センター Port Community Center |
愛媛県今治市 |
今治港につくられた待合所や飲食店などが入った複合施設である。 港が中心市街地に近いことから、港ににぎわいを創出することで そこから中心市街地全体の活性化へとつなげることを目的として整備されました。 愛称は「はーばりー」とどこかのブランドのような名前ですが、 Harbor(港)と今治のバリを合わせたものだそうです。 建物の形態は分かりやすく「船」で、低層部はピロティやガラス張り、 上部は船底のような丸みを帯びています。 全体的に曲面の多い建物がなんとなく原さんぽくないというか、かっこよく見えない気が。。 '22.10.22 |
||
2018 | eggg Cafe |
東京都小平市 |
小平市の幹線道路沿いにつくられたレストランである。 道路に面した細長い敷地に建っており、真ん中に細長い中庭を持つ二つの建物で 構成されています。 天井の高い空間は卵料理の店ということで黄色が多用されたカラフルなものとなっています。 天井にはワイヤーが張ってあるのですが、1時間に1回ボールが転がるという仕掛けが 施されているので、ぜひ訪れた際は見てほしいです。 名称の「eggg Cafe」って「g」が多いと思っていたのですが、「えぐぅ〜」と読むみたいです。 ちなみに有名なパンケーキを食べましたが、びっくりする美味しさです。 '19.4.25 |